自閉症の人の感じる恐怖心

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Nice!

ツヨは小さい時、恐怖を伝えてくることが多い子でした。
家の中でも私にしがみついて抱っこばかりしている時期もありました。
足を床に降ろして自分の足で立つことすら怖いようでした。

コトを幼稚園バスまで送っていかないといけないので、
4歳か5歳までバギーに乗せて「移動」することもありました。
乗っていると恐怖心が和らぐようでした。
偏食がひどくてその頃は痩せていたので
(これも知らない食べ物たちへの恐怖心でした)
なんとかバギーに収まってくれました。^^;

幼児訓練会に行っても療育センターに行っても
年少・年中の頃は私を求めて泣くばかりで
よく親子分離ができたものだなぁと
私と引き離そうと努力した先生方の粘りに脱帽です。
ツヨはだんだんと私と離れられるようになっていきました。

あの恐怖心がまた形を変えて表に現れてきたのかな。

昨日は久々に水泳教室へ行こうと誘って、
駅へ向かって歩き出したはいいけれど、
途中でやっぱり戻りたがったので、
じゃあ戻ろうと言うと『行く』と。
家から徒歩15分のモノレール乗り場までいくとやっぱり『家に戻る!』と。
少しイラッとしてパニックになる目つきになったので
ここで暴れたら私一人では抑えられない、と、
車でなく徒歩で外出することに恐怖を感じました。
いよいよとなったら警察を呼んでパトカーに押し込めて家に送ってもらうしかない。
(そんなこと、したことありませんが、タクシーでは無理です)
ターミナル駅で人がすごく多く、他の人が危険なのです。

ツヨはジェスチャー、私からは簡単な言葉とジェスチャーで会話。
無理強いはいけない。ツヨの表情を観察しました。
一旦家に向かったけれど、ひきつった顔でやっぱりモノレールに乗ると言うので
もう乗せるしかありません。
大人に近い体つきの自閉症児を納得させないで動かすことはできないんだ、と痛感しました。
何回もジェスチャーでやりとりを繰り返し、ツヨの意思を尊重しました。
ツヨも悩んでいるようで、次第に意志を尋ねることすら申し訳なくなったけれど、最後までやり遂げたいという気持ちも痛いほど分かりました。

プールまでは一駅乗って、徒歩で10分。
結局行ったり来たりを繰り返して25分で着くところ50分かかり、
プールの玄関でしばらくたたずみ、靴を脱ぐのにまた5分。
水泳教室はとっくに始まっています。
エレベーターに乗って(行先は2階ですがここはお決まりで)
ドアが開いた・・・

・・・結局ツヨはエレベーターから降りることができませんでした。
氷のように固まっていました。体も顔も。

偏食も道こだわりも着替えも水泳教室も一時ケアも
それ自体怖いものではありません。
食べ物も道も洋服もプールも決して襲ってはきません。
でもツヨにはまるで襲ってくるかのように感じられてしまう。

かわいそうなことをしてしまった。
最初の一回はやってみないと結果は分からないとはいえ・・・

「プールはおしまいです。帰ります。」
意を決してきっぱり言うと
ハッと肩の力が少し抜けてコクリとうなづいて帰途につきました。

なんて難しいさじ加減なんだろう!
ヘルパーさんでは(申し訳ないけれど)とても無理・・・

その後、無事家に帰り、だんだん落ち着いて笑顔も見られました。

マイカー以外で外出することは、やっぱりとてもハードルが高い。
マイカーならどこでも連れて行っちゃえとは思わないけれど
学校や病院は行かなければならない。

そして、恐怖から遠ざけてばかりでは何も越えられないとは分かっています。
幼児の頃に泣き叫ぶツヨを引き離さなかったらどうなっていたでしょう。
ただ、幼児の頃と違って、そう簡単なものではないはず。
きちんと本を読んで勉強しないといけないな。

帰りのモノレールを待っているとき、
そういえば冬に家族4人で大仏と洞窟を見に行ったっけと思い出しました。
家族でお出かけ
もしかしてあれが最初で最後の家族で電車でのお出かけだったのかもしれない・・・
そう思うと急に涙があふれました。

どうかまたツヨが自信を持って前へ歩くことができますように。

ツヨに応援ありがとうです