「今日も一人で来れたんですね?」
「はい」
「一人で大丈夫でしたか?」
「はい」
「そうですか。死にたくないですか?」
「今はそれほど……」
「そうですか」
「そんなに悪いんですか?」
「まあ」
「どのぐらいなんですか」
「ふつうの男性の三分の一以下です」
「男性ホルモンの数値がですか?」
「そうです」
「奥さんに連れて来られてグッタリしている患者さん達と比べて、私の数値ってどうなんです?」
「低いです」
「私の数値が?」
「はい」
「そんな元気でいられるのが不思議です」
「はあ……ということは?」
「LOH症候群です」
「それは、診断ですよね」
「はい」
「季節の変わり目が関係あるのかもなあ」
「今までにそういうケースの患者さんは?」
「いません」
「ってことは、私が始めてのケースですか」
「まあ、しばらく様子をみてみましょう」
というわけで、なんとも呆気なくLOH症候群の診断を頂いてしまった次第である。
この日は診察後、ホルモン注射を打って帰る。
筋肉注射で痛いという話だったけど、私は全然痛くなかった。