世間の思惑って・・・

11
Nice!

今思えば、私は世間の思惑通りには生きていけない人らしい。結婚して驚いたのが、会う人会う人、皆、打ち合わせしたかのように同じ事を言うのだ。「早く頑張って子供作ってね」「30歳前に子供を作らなくちゃね~」この辺は田舎と言ってもいい土地なので「女は子供(跡取り=男の子)を産まなくちゃ 嫁の資格はない」なんて、信じられないことを言われているお嫁さんも実際にいる。しかしだ!誰もが「結婚したら子供が出来て当たり前」と思っていることにビックリした。そうか。そういうものなのか。というより、私は結婚願望はなかったが子供だけは欲しいと思っていたから、「早く子供作って」と言われることには正直、抵抗はなかった。しかし、半年たっても妊娠の兆候もない私にさらに世間の口調は露骨になる。「畑だって耕して肥料を撒いてこそいい野菜が出来る。 日々の努力が大切だよ~(薄笑)」「サボってるとすぐ産めない年齢になるよ~(薄笑)」全然、意味がわからなかったが、笑って受け流すしかなかった。そうこうしているうちに1年が過ぎた頃、私の腹には、子供、ではなく、でっかい腫瘍を抱えていることがわかった。子宮内膜症が原因の卵巣膿腫。あまりにでかかったため、全身麻酔の開腹手術だった。そして、気が付くと、あれほどやんややんやと言われ続けた 「子供」「妊娠」「出産」と言った言葉をやはり皆、打ち合わせをしたかのように誰一人、言うものがいなくなった。そうか。私はあんな手術もしちゃったし、誰も私に子供を期待しなくなったんだ。そう思った。それはそれで楽だった。私は仕事を愛していたし、毎日、仕事が楽しかったし、一生、自分の子供は出来なくても子供達と大好きな音楽で関わっていけるならそういう人生もいいじゃん。旦那と一緒に毎週、釣りに行ってボ~っとして夏には仲間とキャンプなんかして・・・そういう人生だって悪くない。そう思ったとたんに、妊娠した。妊娠すれば仕事をやめると思っている人が多いことにも驚いた。しかし、私はつわりがひどくても、午前中に点滴を打ち、午後から仕事に行った。耐えられなくて運転中に路肩に嘔吐しつつも、仕事中は気持ち悪さも半減していた。産んでからも世間の予想に反してのび太が2ヶ月に入ってすぐ、仕事に復帰した。私が特別なクラスを受け持っていて他にこのクラスを指導できる人が身近にいないため、資格のない先生にムリヤリお願いしていた、と言うのも理由のひとつだが、とにかく仕事を休みたくなかった。子供が3歳になるまでは・・・いえ、せめて1歳になるまででもいいからそばにいてあげなさい。その後、諸事情で退職せざるを得なくなり泣く泣く仕事をやめた。本当に本当に、悲しくて、泣いた。子育てに専念していると、子育てママを放って置かない世間があった。ちょっと外に出れば、何ヶ月?母乳?ミルク?布オムツ?紙おむつ?夜泣きは?離乳食は?あら、おしゃぶりなんかさせてダメ!あら、こんなに薄着じゃダメ!あら、まだ首が据わらないの?あら、まだお話できないの?あら、まだできないの?あら、まだ?あらら~?子育てと言うものは、何でも早くできた方が、「いい子」と言われ「ちゃんと子育てしている母親」と見なされるらしい。そのどちらにも当てはまらなかった、私とのび太。そうこうしているうちに、なぁ~んにも教えていないのに、数字、文字、アルファベット、記号、標識などを、勝手に覚えたのび太。「おおお!すごいじゃん!のび太~! オムツ外れるのは遅かったし、まだ喋れないけど、 何かでプラスマイナスゼロになるってことだよね~」と、思っていたら、意に反して、「ええ?!こんなに小さいうちに勉強ばっかりさせてるなんて カワイソウ~!!!」・・・・・。あれ?他の子より早く文字を覚えたりしたのにあんまり誉められないのか?すごいね~、とは言う人も冷ややかな視線でのび太を見る。「それって、『やっかみ』なんだよ」と友人に言われ、へぇ~そうか、羨ましがられているんだ、だけど、自分の子に出来ないことは否定されるんだ・・・人間の心理とは複雑で難しいものだ~世間の思惑って、自分と同じように段取りを踏んで生きていくのが「普通」だと思っている(ようだ)で、自分以上に優れているものは、あることないことの難癖をつけて否定したくなるものらしい。「のび太くん、歴史とか漢字とかスゴイ知識だよね~(薄笑)」と、否定的な雰囲気で取ってつけたように気持ちのない誉め言葉を吐く人たちに「のび太、実は発達障害があるんですよ」なぁ~んて言ったら、どう反応するんだろうか?