「のび太くんは頭がいいからいいじゃない」「普通クラスでやっていけるんだからいいよ」アスペタイプのお子さんを持つ方は一度はこんな風に言われたことはありませんか?私は心の中でこう思いました。「特別支援クラスの恩恵を受けられていいよね」「通級に通えるんだからいいじゃない。 大事にされて羨ましいよ」確かに記憶力は抜群で勉強も出来るように見られるかもしれないけどでも、自閉症の症状が色濃くてパニックも多いこの子たち。この子たちが何の手助けもフォローもない普通クラスの刃むき出しの子供たちの中で無事に平凡に生きていけるわけなどないのだ。のび太が入学して療育が受けられなくなった後、療育の先生方のご好意で普通クラスに進学した子の母親を対象に懇談会を開いてくださったことがあった。「特別支援クラスでは子供も親もある程度、フォローされている。 そういう意味では一番『支援』から取り残されているのは 普通クラスに進級した子と親です。 現に、特別支援クラスに入学した子よりも 普通クラスに入学した子の方が不適応を起こしやすい。 本当にちゃんとしたフォローや支援が必要なのは 普通クラスに入学した子たちなんです」確かに普通クラスに進学した発達障害の子たちにとって行政としてのフォローや支援が少ないのは事実だ。だからと言って「特別支援の恩恵を受けられていいじゃないの」なんて思ったところでどうしようもない。どちらがいい、なんて、馬鹿げてる。どちらにもそれぞれの大変さも辛さもあるのは確かだから。それをお互い思いやれないなんて悲しいもんね。普通クラスだからいいじゃない、とか通級で支援してもらえるだけいいじゃない、とか誰かをうらやむことなんて愚かでしかない。こういう情けない気持ちが自分の中に湧いてくるたび思い出す一言があります。療育で一緒だった子。この子は原因不明の病気でミルクも飲めず夜も寝ずに泣いてばかりで何度も発作で救急車で搬送される赤ちゃん時代を経て5歳でやっと1歳並みの体格になり手を取ってやっと歩けるようになったのだ。この子のお母さんが何気なくつぶやいた。「生きててくれるだけでいいよ。 おまけに笑ってくれるなんて幸せこの上ない」私は聞き逃さなかった。というか、私に話しかけたのかもしれない。そう、そうだよね。授かるはずの無かったのび太。産まれてくれただけで幸せなのだ。のび太の障害をあれこれ思い悩む時、彼女のこの一言が脳裏をかすめるのです。